あらすじ
町の外れの細い路地にひっそりと佇む葬儀専用の花屋「香月」。
この店を営むのは、年齢不詳の女性・咲。彼女は、故人の遺灰である喉仏から花を咲かせ、故人を思う人々の心に最後の言葉を届ける不思議な力を持っている。
咲の店には、悲しみや後悔を抱えた人々が訪れる。訪れる者の想いに応じて、花は一瞬だけ姿を現し、心の奥底にある言葉や感情をそっと伝える。
咲が人々の想いに寄り添いそれぞれの花を咲かせる。
母と娘、友人、恋人——花を通して繋がる記憶や想いは、悲しみを抱えた者の心に静かに届き、癒しと再生をもたらす。
ただ花を咲かせるだけでなく、人々の心に潜む言葉にならない想いを見つめ、そっと形にする存在である。
店に訪れる者たちの物語は、ひとつひとつ花として咲き、やがてまた静かに消えていく——それでも、残された心には確かに温もりが宿るのだった。