あらすじ
尾張市在住の内名珊瑚(うちな・さんご)は38歳の主婦。17歳で高校2年生の健五(けんご)という息子がいる。2人で歩くと決まって姉弟に間違われるほど珊瑚は若々しく、美しい母だ。だが健五は母のヤンチャな性格に困っているようで…
「母さんガーデニング好きだねえ。毎日毎日」
「違うでしょ、庭イジりって言ってるでしょ、に・わ・イ・ジ・り」
「どう違うの…そうだ、尾張市に山伏のお寺があるって知ってる?」
「知らないけど、歴史のあるまちだしね」
「今朝、クラスの白子と淼ちゃんがそこのチラシ見て盛り上がっててさ。修験道の見学が女子にもできるんだって。僕と梨々子も誘われてるんだよ」
梨々子は健五の幼馴染で、サイゼリヤでの伝説の告白以来、今では恋人同士だ。
「行けばいいじゃないの。あんた梨々子ちゃんに尽くしてるの?あんたみたいにキリッとしない男子があんな可愛い女の子に好かれるなんて金輪際ないのよ?わかってる?」
「釈然としないけど、まあ確かにリリは…いやなんでもないよ!」
うっかり梨々子の可愛さを口にしかけた健五は自重する。いつもこうした自然な流れで、色々と自白に追い込まれているからだ。
「なーによ怪しいわね、だいたい、ちゃんとやってるの?」
健五がギックリする。
「やってるってなな何を…」
「そりゃ宿題とかゲーム…なんてヌルい展開をママがすると思うの?ママが聞きたいのはセ」
「ギャーーース!かか顔が近いだけで怒るような奴だよ?さーて、リリとお寺見学の対策を相談するかな。白子が張り切ると僕らが不幸になる仕組みだからさ、はは、はははー!」
「なーによ慌てちゃって。近いと怒るの?じゃ距離を取ったら?」
「3倍怒られる。どうなってんのさ女子って」
「あはは、もーやっぱ可愛いなぁ梨々子ちゃん!あんたが振られたらママがもらうからね」
「好きにしてよ!じゃあ僕走ってくるから、庭いじり頑張って」
「違う、『庭いじり』じゃなく『庭イジり』!まあ健五にはわかんないわね。あはは!」
麗かな午後。遠くの山でかすかに雷光が見えた気がした。
「春雷…もうすぐ春ね。ふふっ」
土づくりが順調な庭を眺め、今年は何の花を植えようか…と楽しい気分になる珊瑚であった。
【Dedicated to Mr.Niwa】