あらすじ
一杯のラーメンをめぐって展開される、経済原理と消費者心理のすれ違いを描いた掌編である。
住宅地に開いた小さなラーメン屋。開店当初はワンコインの価格と物珍しさで人が集まり、店主はその賑わいを「味への評価」だと信じ込む。しかし値上げのたびに客足は遠のき、原材料高騰や品質向上の努力も、顧客の求める「価値」とはずれていく。店主の誇りと客の本音は交わらず、やがて店は静かに幕を閉じる。
安さか、質か――需要と供給の間に横たわるギャップを、経営者と消費者双方の視点から鮮やかに浮かび上がらせる一作である。