あらすじ
――あの男……あいつ……あいつは……!
電車の中、その男の顔を見た瞬間、肌が粟立った。気のせいなんかじゃない。あの男、確実に見覚えがある。
けれど、どれだけ記憶を探っても、その輪郭はぼやけ、霧の奥に隠れるように掴めない。でも、どこかで会ったことがあるのは間違いないのだ。
男が電車を降りた瞬間、僕の身体は勝手に動き出していた。気づけば改札を抜け、その背中を追っていた。
しかし、どうしようか――駅を出たところで、少し冷静さが戻ってきた。
本当に見覚えがあったのか? ただの記憶違いじゃないのか? 声をかける前に回り込んで、もう一度ちゃんと顔を確かめるべきか……。いや、そもそも見覚えがあったとして、なんて声をかければ――あっ。
男がふいに振り返った。僕は息を呑み、立ちすくむ。
どうやら向こうもこちらに見覚えがあったらしい。目が合った瞬間、男の表情が一瞬にして強張ったのだ。そして――逃げ出した。男は踵を返して走り出し、僕もまた反射的に駆け出した。
人混みを突き抜け、周りの視線も構わず追い続け、狭い路地裏へと追い詰めた。
「見つけたぞ!」