あらすじ
蒸し暑い夏祭りの夜、主人公は浴衣姿の「あなた」と並んで歩く。打ち上がる花火に照らされた横顔は花よりも眩しく、ただその一瞬を永遠に閉じ込めたいと願う。
しかし、ふと漏れた「来年も一緒に来られたらいいね」という言葉に返ってきたのは「来年、って言えるかな」という曖昧な答えだった。未来を信じたい主人公と、約束できない「あなた」。すれ違いはわずかな会話から生まれ、やがて深い距離を刻んでいく。
翌日、約束の場所で待ち続けるも「あなた」は現れない。人混みに紛れて消えた姿を追いかけることもできず、残されたのは切符一枚と、手の温もりの記憶だけ。
やがて季節は巡り、夏の終わりに主人公はその切符を川に流す。世界は「あなた」だけを映してはくれなかったが、確かに胸の中で芽吹いた恋情は、儚くも確かに咲いたのだと悟る。
切なさと温もりを抱えながら、主人公は笑みを浮かべる。夏が去っても、あの夜の花火のように消えない想いを胸に秘めて。