あらすじ
男女の仲とは誠に不思議なものである。
私は以前、島津斉興が脇目もふらず、お由羅を愛して、その云いなりになった話を読んだことがある。過去にも新聞を賑わした某百貨店の前社長が愛する女性のために分別を失い、愚行の数々を犯した話が、当時の新聞や週刊誌を逃したことがある。
無論男をそこまで迷わすのであるから、人に優れた色香の持ち主であるには違いなかったと思うが、どんな美人でも、毎日見ていれば、飽きるであろう。
他に増す花もできるかもしれない。
それがそうならず、身も心も惹きつけてしまうというのは、これはもう1種の宿縁というものではなかろうか。
今回、私は藤原薬子という女性に興味を持った。
桓武天皇の東宮安殿(あて)親王の御殿へ上がったのは、これはもう、一種の宿縁というものではなかろうか。
この小説は、薬子なる人物の物語である。
薬子は、一体、どんな悪女であったのだろうか?