あらすじ
名を刻む者が歴史を残す。
ならば、名を消す者は――何を遺せるのか。
幕末、京の町を震わせた新選組。
池田屋事件、禁門の変、鳥羽伏見、箱館戦争。
そこに確かに存在しながら、史書には残されなかった二人の影がいた。
一人は、白布をまとい、剣鬼のごとく裏任務を担った 沖田静。
表に立つ沖田総司の「影」として、血に濡れた仕事を果たし続ける。
もう一人は、名を求めながらもその名を奪われ、
それでも静の背に寄り添うことを選んだ 矢野蓮。
「背を預けられるのは二人だけだ」という言葉を胸に、
迷いと痛みに揺れながら、ただ隣に立ち続けた。
時代は彼らを照らさず、
勝者の記録に名を残すことも許さなかった。
けれど、雪に染まった大地に刻まれた影の呼吸は、
確かに誰かの心に届き続ける。
名を遺さぬ者として散った二人。
しかし、その無名こそが永遠を証す――。
涙と静謐に包まれた、もうひとつの新選組異録。