あらすじ
【出世したい騎士×引きこもり精霊士】5年前の精霊祭で祈祷を失敗したことに耐えきれず、廃墟のような古城に逃げるように住み着いた精霊士のニコラ。秋の訪れとともにニコラの前に現れたのは、ニコラを王都へ連れ戻すという使命を受けた聖騎士のセヴランだった。
――↓以降ネタバレあらすじ
木のお面をかぶったまま心をひらかないニコラをあの手この手で連れ出そうとするセヴランだったが、「俺に会いに来るのはどう?」という提案を皮切りに、二人の偽りの交友が始まる。
秋深くなり、はじめて同年代の〝友達〟と過ごす生活の中、今まで見えていなかった価値観や考え方に触れ、ニコラの世界は広がり楽しさを覚えていく。たとえ関係が偽物であっても自分にとっては本物だと感じ、自分が「人とわかりあいたい」という欲求に蓋をしていたことに気がつく。セヴランもまた、自分の価値を認めさせることに必死で、出世競争の中で自分の心を見失っていたことに気がつき、飾らない姿を見せるニコラを守りたいと思うようになっていく。お互いの弱さに触れ、かけがえのない存在だと感じるようになるが、セヴランが任務で動いている以上、別れのカウントダウンは始まっていた。
冬が近づき、王都でニコラの世話係をしていたオーギュスタンが訪れたことにより、セヴランに窃盗逃亡の容疑がかかっていることが発覚し、穏やかな生活は一変。突然別れを告げられ、ニコラはようやくセヴランへの恋心に気づき伝えるがセヴランは去る。取り残されたニコラを5年前の失敗の悪夢が襲う。
過去に苛まれながらもセヴランを救いたいと思ったニコラは、気づけば王都へと馬を走らせていた。だが、再会したセヴランはなぜか自分の罪を認めるような様子で、牢の中からニコラを追い払おうと冷たい言葉を投げつける。傷心のニコラは王都をさまよい歩きながら、自分になにができるかを考え、精霊士としてもう一度祈祷をすることに決める。精霊に唄を捧げる中、どんな場所でも特別な日じゃなくても着飾らなくても、ありのままの自分で好きな人の幸せを祈ってもいいのだと自分の欲求を許すことができた。
祈祷により精霊士としての力を示すことができたニコラは、大精霊士セラフィオスにセヴランの処遇について提言し、自らは王都には戻らない覚悟を決める。はじめての雪が降った日、ニコラは自分らしく自分の望む道へ進むための一歩を踏み出した。追いかけてきたセヴランもまた、自分が「守りたい人を守るために」騎士になったことを思い出し、ニコラとともに旅立つことを決意。セヴランは自分も策略にはめられてしまったこと、5年前の精霊祭でニコラを救ったのはセヴランであったことを告げ、二人はお互いの気持ちを交わし合う。粉雪の舞う白銀の世界へ踏み出し、ともに消息を断つ。サン=シルヴァン聖王国の歴史には、名もなき精霊士の逸話が各地にたくさん残っている。その傍らにはいつも見守るように騎士が寄り添っていたという記述も多い。