あらすじ
精霊の血筋であるホルスト家に生まれたゼトスは、水晶球を使って、千里先も見渡すことができる。遠見という特殊な力を持っていた。
しかしその家柄ゆえに、何が人の本心なのか見えない状況に、ゼトスは不満を抱いていた。
貴族でありながら自由な交流を求めて、ゼトスは屋敷を抜け出し町を散策するようになる。
けれどそんな折、町に探しに来た父親と喧嘩をして、道端に飛び出してしまったゼトスを庇って馬車に轢かれ、父親が亡くなってしまう。
父親の死に責任を感じたゼトスは、以降、恋愛や自分の幸せに興味を持てなくなってしまった。
そんなある日、母親の再婚相手であるゼノンの領主の一人息子、イエルが現われる。
ゼトス十歳。イエル十五歳のときだった。
イエルは塞ぎ込むゼトスを根気よく導き、再び外の世界へ連れ出してくれた。
そんなイエルを好きになってしまったゼトスは告白するが振られ続け、通算五十七回目に振られてようやく告白を諦める。
それからイエルが十八歳の成人を迎えた年に変化があった。イエルが騎士団に入隊し、城を開けるようになったのだ。
イエルとの距離を感じたゼトスは、ちゃんと弟として振る舞うことを決意するのだが……
さらに時は流れ、ゼトスが十六歳になったある日。
旅の商人が置いていってしまった異国の珍しい犬種の子犬を城内で拾い、リーバと名付けて育てることとなるのだが、
この子犬は、真っ白い毛玉の中を異空間と繋げることが能力を持つ、異国の子犬だった。
それからまた半年ほどがたった頃。
ゼノン領の領主となったイエルが、遠征から帰って来た。
団長のイエル率いる騎士団たちの活躍を記念した祝祭が催される。
通常三日間のところを、今回は半年後に控えた精霊祭の予行演習も兼ねて、祝祭は二十二日間行われることとなった。
イエルに振られて以降、祝祭には参加をしなくなったゼトスだったが、祝祭のさなかにトラブルが起こる。
風邪を引いた状態で遠見の力を使おうとしたところ、謝って水晶球を床に落としてしまったのだ。
そのため、水晶球の修復を幼なじみで商人のキルクに頼むことになった。
ゼトスが城の自室へキルクを呼んだところ、修復に必要な材料のうちの一つ「人魚の涙」足りないと、報告を受ける。
ゼトスは出来るわけがないと高をくくって、リーバに海と毛玉の中の異空間を繋げて、人魚を連れてくるよう誤った指示を出してしまう。
しかしリーバは本当に、毛玉の中の異空間を海を繋げて、海水と一緒に人魚の王子オルウェンを連れてきてしまうのだった。
人魚の涙を渡すことを条件に、イエルの許可を得て、オルウェンに城下町を案内して。そうしてようやく水晶球の修復の材料である「人魚の涙」を手に入れるゼトスだったが、
修復が完了した水晶球に映し出されたものは、魔の海域と呼ばれ、海の民である人魚も恐れて近づかない禁断の場所に生息する化け物──大ダコだった。
そんななか、幼なじみのキルクの弟が乗船している船から、連絡が途絶えたことを知る。
リーバの能力を使って何とか退治に成功するも、ゼトスは精霊力を大ダコに食われ、数日寝込んでしまう。
その間、心配したイエルが付ききりで看病し。
祝祭中、ずっとイエルに陰ながら見守られているのを感じていたゼトスは心を溶かし、兄弟仲を取り戻すのだった。