あらすじ
宝石が光を弾く──だがそれは、ただの輝きではなかった。
森や湖、風や炎。この世界に宿る精霊獣たちの力を抱いた宝石は「獣石」と呼ばれ、持つ者に加護を与える。
王侯貴族にとっては権力の象徴であり、旅人にとっては護符であり、時に戦場を血に染める兵器ともなった。
ローワン・ヴェルディは、その獣石を扱う一族“獣石商”の末裔だ。
精霊獣と心を交わし、宝石に宿らせることができる──その繊細な技を唯一受け継いでいる。
だが幼いころ、一匹の精霊獣の暴走によって家族を失い、自らも右腕をなくした。今は精霊を封じた義手を身につけ、王都の片隅で孤独に工房を営んでいる。
獣石を「道具」や「兵器」としか見ない者たちに抗いながら、ただ静かに、獣石と向き合い続けていた。
そんな彼の前に現れたのが、精霊獣ハンターのエリアス・カーヴィル。
各地を渡り歩き、依頼のために精霊獣を狩る男。鍛えられた体躯と琥珀色の瞳を持ち、直情的で不器用。
「精霊獣は捕らえる対象にすぎない」という彼の価値観は、ローワンの信念と激しくぶつかり合った。
しかし、とある事情から二人は共に旅立つことになる。
盗賊に襲われ、森の奥で暴れる精霊獣と対峙し、野営の夜に焚火を囲む。命の危機を共にくぐり抜けるたび、互いの強さと弱さが少しずつ見えてくる。
ローワンは傷を抱えながらも精霊を慈しむ優しさを。
エリアスは戦うことでしか生きられなかった孤独を。
衝突はやがて理解に変わり、夜風に揺れる火の灯りの下で、二人の心は少しずつ近づいていった。
だが、彼らを待ち受けるのは外の敵だけではない。
王国は、獣石商の技術を「兵器」として利用し、隣国との戦に備えようとしていた。
さらに、黒衣の占い師が王を唆しているという噂も広がっていく。
──ローワンの義手に秘められた恐るべき秘密とは。
──そして、彼が語る“禁術”の真実とは。
孤独な獣石商と、不器用な精霊獣ハンター。
宝石の輝きに導かれた二人の旅は、やがて愛へと変わり、彼ら自身の未来をも選び取ることになる。