あらすじ
(登場人物)
主人公(語り手)・・・ 40歳の元全日本馬場馬術選手。現在は地方競馬場の馬術部で課長職。過去の栄光に囚われながら、後輩との対比の中で自己を見つめ直す。
彼女(後輩)・・・ 主人公の一学年下の後輩。同じ女子大学・馬術部出身。初の全日本出場を果たし、技術・人望・人格すべてに優れた理想的な人物。次のロスオリンピック強化選手に推薦される。主人公を「お姉ちゃん」と呼ぶ。
部下たち・・・ 馬術競技に取り組む若手職員。彼女を慕い、主人公には距離を置く。
辞めた部下・・・ 主人公の依怙贔屓に反発し退職。東京で美容師の卵として新たな道を歩む。
主人公の馬・・・ 無言の存在ながら、主人公の心の変化を受け止める象徴的な存在。
※彼女たちの主な業務は、競馬開催時に馬と騎手を先導する「誘導馬」に騎乗することです。ドレスを着用しての騎乗が求められ、華やかな演出の一端を担います。採用にあたっては、騎乗技術に加え、容姿や立ち居振る舞いの美しさも重視されます。
(あらすじ)
40歳の主人公は、かつて全日本に三度出場した馬術選手。現在は地方競馬場の馬術部で課長職に就いているが、職場では「怖い」と敬遠され、部下との距離を感じている。対照的に、後輩である彼女は初の全日本出場を果たし、2028ロス五輪の強化選手に抜擢され技術・人望・人格すべてにおいて周囲から慕われている。
主人公は、彼女の振る舞いや生き方を目の当たりにしながら、自分の我儘さや過去の栄光の執着、依怙贔屓、見栄、心の歪みを次々と自覚していく。彼女の努力や覚悟、家族との関係、清潔感、コミュニケーション能力に触れるたびに、主人公は自分との違いに苦しみながらも、少しずつ変わりたいという思いを抱くようになる。
最終話では、彼女の言葉「まずは馬に優しく話しかけるところからですね、お姉ちゃん!」に救われ、主人公はようやく自分と向き合う決意をする。過去の栄光にしがみつく人生から、今の自分を受け入れ、少しずつでも前に進もうとする姿が描かれる。
これは、馬術という競技を通して、人間の弱さと再生、そして他者との関係性を描いた、静かで力強い成長の物語である。