あらすじ
メインテーマ「雲(妄想コンテストお題)」
サブテーマ「あれるべき場所」
かつて人は空を求めた。鳥のように大空を舞い、翼を広げて太陽へと近づきたいと。
イカロスは太陽の熱により羽が溶け、飛ぶ能力を失った。彼は、産み落とされた海にその体躯を沈め、そして、死んだ。
人は長らく空を求めていた。少しでも高く、少しでも遠くを望みたいと。いつしか羽を作り出した人類は、その身を大空に羽ばたかせる術を手に入れた。
それは、太陽に羽が溶かされることはなかった。
人は雲を求めた。雄大に浮かぶ雲は、甘いソフトクリームのようにも、一方で黒く滾った雲は神の怒りを携えたともいわれた。かつて雲間に神がいると信じた人々は、やがて童話を生み出し、神話を生み出し、科学を生み出し、そして、雲間に入る手段を手に入れた。
そこに神はいなかった。
人は宇宙(そら)を求めている。相対性理論に基づく長距離航空航法、ワープ理論と呼ばれる別空間座標への同一時間軸と言う制御下における長距離航法。雲の境界(クラウド・ボーダー)を超えたばかりの人類にとって、宇宙は極めて広大。だが、新たなる神(科学)を持って、人々は宇宙へと羽ばたく。
くろに怯え、人々は明かりを灯した。ここで問う人はいなかったのだろうか。常に暗い宇宙へと羽ばたくことは、果たして真なりや?と。
我々は根を切り離し、飛び立とうとしている。これまでは、根に、地に戻ると言う前提があったが、これからは違うのだ。
もし人に、踏み越えてはならない境界があるならば――