あらすじ
ビアトリスは初め、叔母が呪いをかけているのだと思った。
叔母は父の末の妹で、当時は十八歳、貴族学園に通う学生だった。
ビアトリスとは十歳しか違わない叔母は、叔母というより年の離れた姉のような存在だった。
その叔母が、小箱に向かって何か囁いていた。それから、小箱の中に今しがた囁いた言葉を閉じ込めるように、叔母はすぐに蓋を閉じた。
「ごめんなさい、アーノルド様」
両手で持った小箱に向かって叔母が謝るのが聞こえて、ビアトリスはそんな彼女に声をかけることができないまま、小さく開けた扉から動けずにいた。
小箱に何ごとかを吹き込むように囁いた叔母はきっと、間違いなく婚約者との破談の呪詛を込めたのだと、そう幼いビアトリスが思い込んだとしても仕方ないことだったろう。
叔母は当時、婚約者が関わる厄介な物事に巻き込まれていた。
アーノルドとの破談を願った呪詛の詰まった象牙の小箱は、今、ビアトリスのもとにある。
そしてビアトリスもまた、婚約者に関わる厄介事に巻き込まれていた。
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