あらすじ
「レオン、また変なものを作ってるのか?」
後ろから声をかけてきたのは、師匠のマルコス・グランツだった。五十代の貫録ある魔道具職人で、この工房の主である。
「変ではありませんよ。ちょっと魔力回路の配置を……まあ、従来の方法とは違いますが」
「従来と違う?レオン、お前はまだ二十二歳だぞ? 基礎もできていないのに勝手な改良をするな」
「基礎なら十分理解しています。ただ、こうした方が効率がいいんです。理論的には魔力伝達率が約三倍向上するはずで―」
「すみません、冒険者登録したばかりのエリア・セルクライトと申します。魔道具の購入を希望しているのですが……」
手にしていた【強化魔石】を彼女に向けて掲げた。
「ちょうどいいタイミングですね!これなんてどうでしょう?今作ったばかりの最新型【強化魔石】です。従来品の三倍の効果がありますよ」
エリアという女性は、手の中の魔石を見て困惑した表情を浮かべた。
「あの……失礼ですが、この魔石、魔力反応がとても弱いように見えるのですが?」
「見た目は地味ですが、実際の性能は抜群です。まあ、当然でしょう?」
エリアは【強化魔石】を改めて手に取った。魔力を注入してみる。
「あ……」
彼女の表情が変わった。驚きと戸惑いが混じった表情で、魔石を見つめている。
「これ、確かに効率がいいですね……でも、なんで魔力反応がこんなに弱いんですか?」
「無駄な魔力放出を抑えているからです。従来品は魔力を外に漏らすことで『強そう』に見せてますが、それって単なるエネルギーロスでしょう?」