あらすじ
無名配信者・神田湊は、伸び悩むチャンネルを抱えたまま、公認ダンジョンの低層を生配信している。
ある夜、画面には誰も映っていないのに、マイクだけが剣戟と風切りを拾った。
コメント欄は炎上寸前——その直後、湊に届いたのは二行だけの提案。
「護衛の契約。条件:映さないこと/21:30終業。」
白布を被る人物、通称狭霧。
湊は“映らない護衛”と組み、定時攻略を掲げて配信を立て直す。
映像ではなく、音・痕跡・風の動きで戦闘を描く実況。
やがて視聴者は、画面外にいる相棒の存在を“物語として”感じ始める。
一方で、「見せろ」という圧力は強まる。
検証配信、企業案件、外部配信者の乱入、BANの影。
狭霧は言う——「可視化は力だ。だからこそ、見せない作法が要る」。
御札、祓い詞、名を呼ばない約束。
湊は“見せる正しさ”と“守るための不可視”の間に線を引き、コミュニティと共に安全のガイドを整えていく。
中層の鏡面回廊では、可視の暴力が狭霧を縫い留め、白布がほつれる。
そして深層の門へ。
そこにいる“名を喰う主”は、チャット欄に呼名を誘う囁きを流し込む。
画面が賑わうほど、相棒は“こちら側”から薄れていく——。
湊は決断する。
配信を切る。観測そのものを断つ。
視界は闇、頼れるのは足裏の音と、背中を押す温度だけ。
終業を過ぎ、狭霧の輪郭が崩れはじめたとき、湊は胸ポケットの白布の一片で帰還の座を引き戻す。
二人はギリギリで地上へ。
事後配信で湊は語る——見せないこともまた、守る物語だと。
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狭霧は補修が済むまで浅層運用に戻り、湊は相棒と交わす始業と終業の詞**を、画面の外でそっと続ける。
カメラには映らない。
それでも音と風が、背中を預けあう関係のすべてを語っている。