あらすじ
太平の世を夢見ていた男の、壮絶な運命が幕を開ける。
と、いえば大袈裟かもしれない。
これは、不条理な人生を生きてきたおっさんの再生物語である。
シゲン・カチバナは、戦乱の世を生きる四十代の冴えないおっさんだった。
仕事は日当、八文のお馬番。
身分制度と理不尽な主君に翻弄され、家族を失い、それでも慎ましく暮らすことを選んだ。
彼が出会ったのは、柳生の剣を学びながらも、独自の流派『阿吽神影流』を創設した女剣士・桔梗《ききょう》だった。
シゲンは彼女に弟子入りするが、知らず知らずのうちに、彼女が驚愕するほどの剣才を開花させていく。
平穏な日々を夢見ていたシゲンだったが、その日常は、師匠の命を狙った腐敗した柳生一派によって、無残にも打ち砕かれる。
シゲンは怒った。
彼は生まれて初めて、刀で人を斬る。
その剣技は、獣や魚、虫の動きを模した、人間離れした一撃だった。
血の雨が降りしきる中、柳生一派を壊滅させたシゲンに、天からの雷が落ちる。
そして彼が次に目覚めたのは、剣と魔法が交差する、まったく異なる世界だった。
異世界でひっそりと暮らそうとするシゲンだが、王都より派遣された騎士団によってその平穏は奪われようとしていた。
三百体を越えるゴブリンの大群が村に攻め入るという。
騎士団を束ねるのは絶世の美少女、剣聖ビシュナ。
彼女が率いる騎士団は、ゴブリン討伐に派遣されたのだが、戦地になる村を明け渡すように言ってきたのだ。
騎士団は、ゴブリン戦に向けて有利になるように田畑を燃やし、家を壊そうとしていた。
三年もかけて荒れた土地を開墾し、田畑を豊かにしたというのに、このままでは、その苦労が水の泡になってしまう。
彼は不本意にも、ビシュナの要望を却下。
二人は戦うことになり、シゲンは勝利してしまう。
平穏を求める彼は、皮肉にも追われる身となってしまった。
行く先々で理不尽な強さを発揮し、人や魔物との争いに巻き込まれながら、シゲンは再び安住の地を探す旅を続ける。
シゲンは『剣聖に命を狙われる!』
と、思っているようなのだが……?
彼を探すビシュナといえば、
(シゲン先生に会いたい。私は……。あの方に剣術を教えてもらいたいのだ!)
すれ違いの逃亡劇が始まる。
はたして、彼は憧れの「平穏な日々」を手に入れることができるのか?
シゲンの戦いはまだ始まったばかりである。