あらすじ
国立エトラー学園の卒業夜会。
在籍する貴族子弟にとっては学生時代最後の思い出となる場を汚しかねない奇行ともとれる、王太子サイラス・エルステッドの婚約破棄宣言が、突然舞踏広間に響き反響する。
「婚約破棄を受け入れる事はやぶさかではないですわ」
その言葉に、辺りがざわつく。
王太子としてもまさか、といった様子で驚きに眉を上げた。
「ただ一方的な婚約破棄をただ受け入れるのでは、私もこの国一の公爵家の体面というものがございます。ですので一つ、賭けをしませんか?」
「賭けだと?」
「ベットするのはそうですね……慰謝料とかどうでしょう? 私が負ければ完全に当家有責として破棄に応じ、慰謝料をお支払いいたしますわ。私が勝てば婚約解消は無しです。やはりわたくしから吹っ掛ける以上は、それ相応のリスクが無いと、つまらないですもの……ねえ?」
妖しく彼女の目が光る。しかしここで、勝負に応じなければ男が廃る。王太子の名が廃る。自身の運命を切り開く力を、見せなければならない。王家ともあろうものが、運命の一つや二つを拓けずに国家元首など務まらない。
「いいだろう。その話、乗った!!」
力強く、威風堂々と宣言するその様は、さながら次期国王の威厳を辺りに知らしめるようで、思わず周囲から拍手が巻き起こった。
かくして、王太子サイラス一世一代の大博打の火蓋が切って落とされた。
ここに、王国の運命を占う戦いがはじまる。