あらすじ
私、夏山桃香(なつやま ももか)には、誰にも言えない秘密の夢があった。
それは、心ときめくような、世界で一番美しいケーキをデザインすること。
でも、早くに父を亡くし、母が一人で支えてくれる私の家では、高価な材料が必要なお菓子作りは、夢のまた夢。スケッチブックに空想のレシピを描きためるのが、私の唯一の楽しみだった。
隣の席の春石樹(はるいし いつき)くんは、クラスで一番無口で、何を考えているか分からない人。
けれど、そんな彼にもまた、秘密があった。
幼い頃のトラウマから、誰にも知られず、一人で完璧なお菓子作りの腕を磨き続けてきた――天才パティシエだという、秘密が。
ある放課後の図書室で、私たちは、お互いの秘密を知ってしまう。
私の夢物語のレシピを見て、彼は、静かに、でも力強く言ってくれた。
「そのレシピ、俺が本物にするよ」
こうして、私――『夢見るデザイナー』と、彼――『秘密のパティシエ』だけの、甘い共犯関係が始まった。
これは、不器用な二人が、お菓子作りを通して、ゆっくり、ゆっくりとお互いの心を溶かしていく、甘くて、もどかしい、恋の物語。