あらすじ
あらすじ
町の片隅にある「ぬいぐるみ修理室」。店主の佐伯真琴は、壊れたぬいぐるみを直し続ける女性だ。
彼女が手をかけるのは、布と綿でできた物体ではなく、依頼主の心に刻まれた記憶そのものだった。
母の入院中に支えとなったイルカのぬいぐるみを抱えた少女。
戦地から帰還したとき、妻が贈ってくれた熊を大切に持ち込む老兵。
母から娘へ受け継がれるパンダのぬいぐるみ。
修理を依頼する人々の背後には、涙や笑顔、世代を超えて紡がれる記憶が宿っていた。
針を進める真琴の胸にも、亡き息子と共に過ごした日々がよみがえる。直せなかった命を想いながら、彼女は今日も祈るように糸を通す。
ぬいぐるみは壊れても、直せば再び抱きしめられる。
それは人の心も同じ。裂け目を閉じ、空白を埋め、再び歩き出すことができる。
工房の灯りは今日もともり続ける。
針と糸が結ぶのは、布だけではない――人と人との記憶と愛情そのものなのだ。