あらすじ
九月の東京。黒崎探偵事務所に持ち込まれたのは、湖で失踪した弟の捜索依頼。しかし、美咲の耳にこびりつく「水の滴る音」と、依頼人が口にした「湖底から聞こえる歌声」は、かつて二人が遭遇した“異界”の兆候だった。
水底に沈んだ村の伝承、生贄を求める異形の存在、そして心を惑わす甘美な歌声。調査が進むにつれ、二人を蝕む幻覚と幻聴は激しさを増していく。それは、人知を超えた存在が発する「呼び声」であり、一度聞けば決して逃れられない呪いだった。
探偵たちは、救うべき依頼人と、自身を蝕む狂気の間で葛藤する。この事件は単なる失踪事件ではない。それは、クトゥルフの神話的恐怖が日常に侵食していく、終わりなき戦いの一つに過ぎない。美咲と黒崎は、その代償を払い続ける。なぜなら、彼らはすでにこの世界を「見てしまった」から…クトゥルフ神話短編小説集第6弾!