あらすじ
近世イタリア。奇妙な風景の夢の中、青年貴族ランベルトの前に仮面で顔を隠した将校服の男の霊が現れる。
「名は無し」と名乗るその霊は、不可解な結婚話の相手、ダニエラ嬢の抹殺を請け負うという話を持ちかけ、ランベルトに強引に契約を結ばせる。
単なる夢かと思ったランベルトだったが、その後、奇妙な魔力を使う女達に襲われた際にその霊が現れ、召喚した悪魔を使い女達を撃退した。
♝ 小説家になろうにて改訂版を公開しています。
♝ 第10回ネット小説大賞一次選考通過しました。
【本文より】
「それ知っています。ご自分の代わりに鶏の魂を持って行かせる方法でしょう?」
男は言った。
「今どきは悪魔も覚えて引っ掛からない」
「やはりお前は悪魔か」
少々ムッとしながらランベルトは言った。
「人霊と言っているでしょう」
「なぜ三月(みつき)も経ってから来た」
「酒を飲みながら呼んでいるからじゃないですかね」
男は懐から羊皮紙を取り出した。
ランベルトの眼前に掲げる。
羊皮紙とは随分と古風だな、とランベルトは思った。
炙り出しのような色のインクで契約内容が書いてあった。
筆記体の、持って回ったような文章だ。
「契約の内容は、政略結婚相手の抹殺を請け負うということで宜しいですか」
契約内容を書いた部分に小さな火が灯り文字の上を走る。