あらすじ
野崎 律は、星野 陽菜(ひなた)のことが大嫌いだった。困っている人を見れば必ず助け、周りに合わせていつも笑顔を見せる陽菜の姿は、律にはまるで「私っていい子でしょ?」と主張しているように見え、うんざりしていた。
ある雨の日、律はいつものように図書室で本を読んでいた。そこに、陽菜が傘もささずにやってくる。雨に濡れた陽菜の、普段の明るい笑顔とは違う疲れた表情を見て、律は戸惑う。陽菜は、律が手にしていた本を見て話しかけ、意外なことに、その本について熱心に語り始めた。
普段の「いい子ちゃん」な陽菜からは想像もつかないほど深い言葉に、律は引き込まれていく。そして、陽菜が「いい子」を演じるようになった理由を語り始める。それは、幼い頃に「いい子」でいることを周囲に求められ、ありのままの自分を否定されてしまった過去だった。
陽菜の行動が「アピール」ではなく、「自分を守るための鎧(よろい)」だったことを知った律は、陽菜への嫌悪感が薄れていくのを感じる。しかし、それでもなお、陽菜の行動が律の価値観と合わず、二人の間には微妙な溝が残ったままだった。
しかし、図書室で過ごす時間を通じて、二人の距離は少しずつ縮まっていく。葵は陽菜の隠された一面に触れ、陽菜は律といる時だけは、無理に「いい子」を演じなくても良いと感じるようになる。
そしてある日、陽菜はみんなの前で「いい子」を演じることに疲れ果て、体調を崩してしまう。その時、律は周囲の目を気にせず、陽菜の元に駆け寄る。その時、律は気づく。自分が嫌っていたのは、陽菜の「いい子ちゃんフィルター」ではなく、そのフィルターのせいで、陽菜が本当の自分を見失いかけていることだった。
律は、陽菜に「無理にいい子を演じなくてもいいんだよ」と、心からの言葉をかける。その言葉に、陽菜は初めて、ありのままの自分を受け入れてくれる人がいることを知る。
そして、陽菜は「いい子ちゃんフィルター」を壊し、本当の自分を少しずつ見せるようになる。律は、不器用で人間らしい陽菜の姿を、心から愛せるようになっていた。
これは、嫌いという感情から始まった二人が、お互いの弱さを知り、偽りのない友情を築き、最終的に心の底から結ばれる物語です。