あらすじ
四国野口町の印刷所に勤める青年景司は、亡き父の言葉「満腹より満足」を胸に、清貧ながら誠実に生きている。質素な暮らしの中でも、母との食卓や仕事の手触りに心の豊かさを見出し、日々を丁寧に重ねていく。
印刷所では、後輩の指導や社内報の執筆を通じて、景司の誠実な姿勢が少しずつ周囲に影響を与えていく。数字の改ざんを求められる場面でも、景司は信念を貫き、正直な報告を選ぶ。その芯の強さは、やがて職場の空気を変え、後輩たちの心にも灯をともす。
「声の実」という喫茶店での会話や、母との静かなやりとりを通じて、景司は言葉の力、人の手の温もり、そして清廉な生き方の意味を深く知っていく。誰に見られずとも、まっすぐに歩むその背中には、確かな誇りと感謝が宿っていた。
満腹ではなく、満足を選ぶ、景司の静かな歩みは、現代に生きる私たちに、心の豊かさとは何かを問いかけてくる。