あらすじ
フルダイブ型VRゲーム『IF』は“異世界”に通じている──。
そんな噂が、巷では囁かれていた。
もちろん、僕は信じていない。
たとえ噂の発端が、“あの”β版の集団昏睡事故であろうとも。
たとえ、被害者達の容態が異様なものであろうとも。
噂は噂だ。
“異世界”なんて、あるはずがない。
──ただ。
ほんの少しだけ、期待はしていた。
選択式の問題に適当に丸をつけるような。
そのくらいの、ささやかな期待を。
転がした鉛筆の出目に人生を賭けるというのは、実に馬鹿げている。
けれど、ゼロでないのならば試す価値はある。
事故の犠牲者となり、いまだに目を覚まさない幼馴染を思えば、
「もしも」の可能性も見逃すことはできなかった。
それに、失敗したとて困ることなどない。
もともと現実には辟易していたのだ。
眠ったままの最後を迎えたとしても、痛みのない幕引きなら悪くはない。
運が良ければ、昏睡状態から目覚めることだってあるかもしれない。
そう思えば、恐る理由など何もなかった。