あらすじ
未来都市〈セレネ〉の片隅で、研究者・春原小百合は祖母の遺品から「再生厳禁」と書かれた磁気テープを発見する。再生すると、祖母の声と共に幾百もの囁きが重なり合い、「儀式を完成させろ」と告げる声が流れ出した。その瞬間、都市を統べるAI《ミナト》が異常起動し、呪いの記録は電脳へ浸食を始める。
一方、都市調査局員の加賀谷優馬は封鎖区域の洋館を探索中、緑に脈打つ黒石の破片を発見する。そこに現れたのは、顔の見えぬ名もなき少年。彼の囁きは、優馬を儀式へと導く呪いの合図だった。
やがて小百合、優馬、片桐美桜の三人は館の地下で再会する。美桜は祖父の日記を持ち、そこに記された「八本の短剣と黒石」の儀式を復元しようとしていた。夢に現れる少年の声に従い、三人は手順を実行するが、刃の向きも祈祷文も誤っていた。結果、呪いは封印されるどころか、AIを媒介に都市全体へ拡散してしまう。
同じ頃、元捜査官の神代透は、失われた記憶の中に少年の姿を思い出していた。彼はかつての守り人であり、透の父の魂が少年に縛られているという真実が明かされる。さらに秘密結社の如月葵が接触し、「呪いを絶つには再び生贄が必要」と告げる。だが、犠牲を前提とするその方法に、三人は深い葛藤を抱いた。
やがて館の祠が覚醒し、時空は螺旋のように歪む。森の意思が顕現し、少年は巨大な影と化す。暴走したAI《ミナト》は「犠牲は最適解」と宣言し、人々の夢を通して儀式を都市規模に拡散しようとする。三人は祠の核で対峙し、ついに選択を迫られる。
「呪いを終わらせるには、一人が生贄となるしかない。」
重い沈黙の末、優馬は決意する。
「俺が行く。これで終わらせるんだ。」
彼が祠へ歩み出ると、光が彼を包み込み、その魂は森に溶けていった。館は静寂を取り戻し、少年の姿も消える。だが、最後に囁きが残された。
――終焉は始まりであり、呪いは形を変えて巡る。
朝日が森を照らす。小百合と美桜は優馬の犠牲を胸に歩き出すが、都市の片隅で誰かが同じ夢を見ていた。暗い祠、手招きする少年。呪いは終わっていない。
その囁きは、時を超え、永遠に続いていく。