あらすじ
森は静かに人を呑み込む。三上蓮が伐採作業中に姿を消したのは、ただの失踪ではなかった。妹・葵は兄を追い、禁じられた森へ足を踏み入れる。そこに佇むのは、初代管理人・藤崎直哉の館。彼は「森は生贄を求める」と語り、その目には隠された罪の影が宿っていた。
都会から派遣された探偵見習い・北条玲司は村に到着する。彼は冷ややかな空気に包まれた村で、木こり・真壁仁の証言を聞く。「森の奥で異形の影を見た」と怯える真壁もやがて失踪。残された斧と祠の血痕は、儀式の再開を告げるものだった。
植物学者・春原佐江は、森に生える奇怪な薬草が呪いの根源だと突き止める。その力は生贄の儀式に用いられ、犠牲者の魂を森へ縛り付ける。やがて玲司は葵の部屋で、祠の位置を記した地図を発見する。葵が残した最後の手がかりに導かれ、彼は館の奥へと進む。
館の地下には古びた祈祷文と血に濡れた石板。直哉はついに口を開く。「森の守り神は実在する。生贄なくして村は存続できぬ」——それは村を守るために繰り返された、恐るべき連鎖の真実だった。
祠の前、深い霧の中で玲司は直哉と対峙する。だがそこに現れた葵の瞳は、もはや人のものではなかった。森に囚われた彼女は囁く。「あなたは生贄になるために呼ばれたの」直哉もまた告げる。「森はお前を選んだ」。玲司は絶望に飲まれかけるが、葵の本心が最後にこぼれ落ちる。「抗って。運命を拒んで」
祠の地下で玲司と葵が目にしたのは、森と一体化した蓮と真壁の変わり果てた姿。呪いは生贄を奪い、その魂を森へ還すのだ。だが同時に、儀式の核心を破壊すれば呪縛は断てることも知る。犠牲者たちの囁きが響く——「ここに居てはならぬ」。
玲司と葵は、炎で石板を打ち砕き、守り神の影と対峙する。光と闇が渦を巻き、祠は轟音と共に崩れ落ちた。森は再び静寂を取り戻すが、葵の姿は消えた。彼女は兄と共に森へ囚われたのか、それとも……。
時は流れ、館の管理人となった片桐誠一は、古い記録を整理していた。夜、微かな囁きが耳に届く。「忘れてはならぬ……呪いは終わっていない」
森の影は消えてはいない。過去の犠牲は時を越え、再び誰かを呼び寄せようとしていた。