あらすじ

祖母の命日、私は一人で夜を迎えた。生前、祖母が大切にしていた遺品をフリマサイトで安易に売ってしまった後悔が、胸を締めつける。特に、祖父が贈ったという夫婦と子供の三体セットのこけしをバラバラにして売ってしまったことが、私を深く苦しめていた。 深夜、静まり返ったリビングから微かに聞こえる「カタ、カタ」という音。恐怖で震えながらも、私は音のする方へと向かった。すると、仏壇の前に、バラバラに売ったはずの夫婦のこけしが戻ってきて、残された子供のこけしに寄り添っていたのだ。 薄暗い部屋で、こけしたちは私に聞こえるように話し始める。「お父さん、お母さん、会いたかったよ」という子供のこけしの声に、夫婦のこけしが優しく応じる。彼らの会話から、これが呪いでも祟りでもなく、バラバラになった家族が元の場所に戻りたいと願う、ただそれだけの切ない思いだったことを知る。 深い後悔の念に襲われた私は、祖父母が残してくれた最も大切な宝物を、自分の無神経さでバラバラにしてしまったことを悟る。心の中でこけしたちと祖父母に謝罪し、私は彼らの秘密を胸にしまった。 それからというもの、毎年祖母の命日になると、私はリビングに温かいお茶と小さな毛布を準備して、彼らの再会を待つ。夜中に聞こえてくる懐かしい音は、かつて私を追い詰めた呪いの音ではなく、家族の愛を思い出させてくれる優しい音へと変わっていた。 静寂に包まれていたはずの家は、今、温かい愛の音で満ちていた。

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小説を読もう2025/09/09
  • 現在の作品こけしが奏でる、愛の音