あらすじ
『ガラスの口笛』
割れた瓶の底から
月の光をすくいあげ
僕は笛を吹いた
ひび割れた音は
瓦礫の街を駆け抜け
沈黙していた死者たちを
ひととき笑わせる
母の鍋から立ちのぼる
じゃがいもの湯気は
もう戻らない
けれど舌の奥に
焦げついた甘さだけが
いつまでも消えずに残る
成長を拒んだ僕の骨は
小さな檻のように固まり
外へは伸びない
だが その中で
声なき声が
割れたガラスのようにきらめく
そして最後に
笛は砕け散り
血の味を残して沈黙する
その沈黙の中で
僕はようやく知る
壊れることが
生きることだったと