あらすじ
――――チリィ……ン……
市街地の賑わいを縫って、涼感を誘う響きが不思議と際立って聞こえた。気紛れに鼓膜を震わせる音と額や首筋を撫でていく風。導かれた先にあったのは、ビルの隙間にひっそりと息を凝らしていた建物だった。年月を感じさせる佇まいだが、寂れた印象はなくレトロな感じの外観だ。どことなくファンタジーチックな印象を受けるのは、レンガの壁を張っているツタのせいだろうか。物語に出てくるような魔法使いの屋敷が現実にあるとすればこんな感じなのだろう。
『そらのまんなか』
店名の下にはこちらも流れるような筆跡で一言。
『あの日の空、この日の空、古今東西の空承っております。』