あらすじ
酒楼の小僮・陸昭が東家のために夜を守ったあの晩、
彼は生涯忘れ得ぬ光景を目にした。
青衣の剣客、七尺の青鋒。血錆に覆われた鎖が刃を締め付け、
覆面の盗賊は猩紅の丹丸を呑み込み、皮膚の下を丹虫が蠢く。
争奪の錦盒に潜んでいたのは、脈打つ「人血丹」。
やがて四大聖地が次々に腐敗の牙を剥いたとき、
陸昭は悟る――
斬り払えぬ血錆、燃え尽きぬ貪火、満たされぬ丹鼎。
それらはすべて、衆生の魔が生み出す幻影にすぎぬのだと。
紅雲寺の丹炉には長生を求める愚民が煮え、
書斎の星辰塔には人の眼を抉る「全知の繭」が吊るされ、
神国の玉座には子を喰らう丹蛻の皇帝が座す。
そして道境・北冥の淵底からは、妹が口ずさんだ童謡が響いていた。
聖地の虚妄の面を踏み砕いたとき、
陸昭の剣に映し出されたのは――
人間の貪欲、その倒影であった。