あらすじ
この国には、十万人を超えるスパイが潜んでいる――そう言われても、多くの人は笑い飛ばすだろう。だが、それは笑い事ではなかった。
G7の中で唯一、日本にはスパイ防止法が存在しない。外国人による土地買収、監視カメラのバックドア、通信アプリの情報流出。国家機密や先端技術が、音もなく海外へ流れ続けている。気づいたときには、すでに被害は手遅れ。日本は「情報後進国」として世界から孤立しつつあった。
内閣情報調査室に新任した桐谷陸は、現場の公安警察から流出事件のファイルを突きつけられる。量子通信、防衛装備、医療AI――国を支えるはずの最先端技術が、まるで日用品のように盗まれていく現実。調べを進めるほどに陸は、国家そのものが静かな侵略に飲み込まれていることを痛感する。
一方、ジャーナリストの篠原繭は、国会での議論を追いながら、スパイ防止法をめぐる賛否の狭間に立たされていた。市民の声は二分され、真実を記事にしようとすれば権力の圧力で封じられる。自由と人権を守るための報道が、逆に「国家反逆」として糾弾される危うさ。記者としての使命と、自らの身の安全との間で繭は葛藤を深めていく。
やがて二人は、外国勢力と癒着する議員の存在、アメリカのディープステートによる圧力、そしてサイバー空間で証拠を消去する巨大なネットワークに直面する。告発を試みた留学生は事故に見せかけて命を落とし、真実を伝えようとする記者は口を封じられる。目に見えぬ鎖が、社会全体を締め付けていく。
それでも陸と繭は歩みを止めない。命を賭して証拠を公開し、ついに国会を動かす。しかし制定されたスパイ防止法には、外国の意向で仕組まれた抜け穴が残されていた。希望と同時に罠が潜む法案。その現実に直面しながらも、二人はなお問いかける。――この国を守る覚悟が、果たして日本人にあるのか。
『静かな侵略 ― 情報後進国・日本の恐怖』は、目に見えぬ敵と闘う国家を舞台に、人間の選択と葛藤を描く社会派サスペンスである。同時にこれは、現代に生きる私たち一人ひとりに突きつけられた問いでもある。平和な日常の背後に潜む「終わらぬ影」を、あなたは直視できるだろうか。