あらすじ
『夜明けのクレヨン』
病室の窓に
朝の光がにじんでいた
まだ世界が目を覚ます前に
君は静かに 息をひそめたまま
空を見ていた
「描いてほしいな、あたしの春」
そう言って 差し出した
握力の弱い手の中に
折れかけのクレヨン
赤、青、そして まだ使っていない黄色
君は知っていた
この色たちが
自分の未来に間に合わないことを
だけど、希望は
塗りかけのキャンバスの端に
まだ眠っていた
誰にも見えない風が吹いて
僕の絵を揺らすとき
君の声が、少しだけ
耳の奥で ほどけていく
「それ、すごく いい色だね」
夜が明けるたび
僕は新しい色を選ぶ
昨日の涙を洗うために
今日の空を描くために
そして、君のために
もう一度だけ
あのクレヨンを
そっと握りしめる