あらすじ
誰にも気づかれない黒子体質の佐伯遥斗。
教室の黒板を拭いても、プリントを揃えても、「ありがとう」と声をかけられることはない。
影でいるほうが楽だと、そう思っていた。
けれど、雨の日。
クチナシの香りが漂う昇降口で、傘を差し出した少女がいた。
その瞬間から、静かな日常は少しずつ色を変えていく。
黒板の裏に残った水跡を「見つけた」彼女――宮原澪。
彼女の「ありがとう」は、やがてクラスのざわめきを越えて、遥斗を表舞台に引き出していく。
陰から支えることしかできなかった僕が、
初めて「並んで歌う」場所に立ち、そして――「ありがとう」の返礼を受け取るまでの物語。