あらすじ
彩国の皇太子・蒼詠は、病弱でありながらも心優しく、民や臣下にも慕われてる存在だった。次期彩王へと期待を寄せられていたある日、反乱軍の手により、冷たい石の牢獄に囚われる。傷を負いながらも生きたいと願う彼の命を絶ったのは、可愛がっていたはずの異母弟・龍賢だった。
――二十一年後。蒼詠は前世の記憶を持ったまま、後宮に仕える宦官・綺宵として目を覚ます。今世の身体は健康そのもの、権力争いとも無縁。前世と違い、平穏な人生を楽しもうと決めていた。
ところが人数不足を理由に、彩王の夜警に抜擢されてしまう。彩王とは他ならぬ、大人となったあの龍賢であった。再び命を奪われるのではないかという恐怖に綺宵は震える。
しかし、宦官に拒否権はなく、仕方なく勤め上げることに。
驚いたことに、龍賢は重い不眠症を患っており、綺宵がそばにいると眠れることが判明する。以来、龍賢は彼を手元に置くようになり、綺宵は皇帝近侍という特別な立場へと引き上げられ、宦官でありながら寵愛を受けることになる。
だがそれは、同時に妃たちの嫉妬と陰謀を招くものだった。毒入りの茶、切り裂かれた肖像画、仕組まれた流産……後宮には数々の罠が張り巡らされている。綺宵は宦官としての立場を利用し、観察眼と前世の記憶を武器に、誰も傷つけず自らを守る「生存戦略」を試みる。
やがて龍賢もまた、綺宵の仕草や言葉の端々にかつて殺した兄の面影を見いだし、苦悩と渇望を深めていく。