あらすじ
主人公『僕』が治療の一環として、自らが「おかしくなっていった」過程を告白する形式で描かれている。日々に退屈を覚えていた『僕』は、サッカー部のマネージャーを務める後輩の女子に心惹かれていたが、彼女が部長と交際していることを知り、落胆する。やがて『僕』は奇妙な夢を見るようになり、そこで彼女が中年の男性と夜の街を歩く姿や、恋人と別れる場面に出くわす。
現実でも彼女は不可解な言葉を口にし、「幸福と不幸は本質的に同じ」「平和な時代は人を満たさない」と語る。さらに彼女は「戦時下のレニングラードに生まれたかった」と言い、第二次大戦中の包囲戦を引き合いに出しながら、極限状況に置かれることでこそ人は英雄と称えられるのだと主張する。その発想は、彼女が日常では得られない実存的な価値を渇望していることを示していた。
夢は次第に過激さを増し、『僕』が彼女の身体に成り代わり、友人から脅迫や暴行を受ける場面まで展開する。現実に戻った後、彼女の存在は誰からも記憶されておらず、『僕』は孤立と混乱の果てに精神を崩壊させる。そして物語の最後、語り手は「これはあなた自身の話だ」と読者に突きつけ、現実と虚構の境界を完全に曖昧にして終幕する。