あらすじ
海に近い町の高校に通う千冬は、よく笑うがその笑顔には澱(おり)が混じる。人を守るために強くなりたくて、ときに人を試すような振る舞いをしてしまう。「守る」と「壊す」の境目を、千冬は自分の指先で何度も確かめる。
ある夜、学校の古い時計台の影で、彼女は「余韻」を集めるという噂を耳にする。余韻とは、誰かが放ったほんの小さな後悔や言葉の揺らぎ。千冬はそれを集め、秤(はかり)にかけるように自分の中で整理することで、心の均衡を保ってきた。
だが、同級生の転入生・朔(さく)が現れたとき、千冬の均衡は微かに崩れる。朔は千冬の「試す」振る舞いに意図的に応じ、逆に千冬を追いつめるように優しく寄り添う。二人の均衡はやがて周囲の人間関係を波立たせ、町に眠る小さな秘密を浮かび上がらせる──。