あらすじ
■ あらすじ
シルクのように滑らかで、銃弾のように冷たい物語。
――伝説の男、ジム・トンプソン。栄光のシルク王にして、冷徹な元スパイ。
1967年、楽園の散歩から、彼は忽然と姿を消した。
事故か、陰謀か。歴史の闇に封印された、衝撃の真実へと誘う、本格歴史ミステリー。
第二次世界大戦の影が残る、微笑みの国・タイ。
忘れ去られようとしていたタイシルクを世界的なブランドへと昇華させ、「シルクの王」として巨万の富と名声を手にしたアメリカ人がいた。彼の名は、ジェームズ・H・W・トンプソン。
しかし、彼にはもう一つの顔があった。第二次大戦中、OSS(CIAの前身)の伝説的な諜報員として、ヨーロッパの闇やアジアのジャングルを駆け抜けた、影の戦士としての過去。
栄光の光と、決して消えることのない影。
二つの人生を生きた彼が、すべてを手にしたはずの、その時――。
マレーシアの高原リゾート、キャメロンハイランド。
穏やかなイースターの昼下がり、彼は「少し散歩してくる」と告げたのを最後に、霧深いジャングルへと消えた。痕跡一つ、残さずに。
これは、歴史上最も有名な失踪事件の謎に、最もありうべき「答え」を提示する物語。
一人の男の栄光と孤独、そして、彼が最期に見たであろう「真実」を巡る、壮大な叙事詩。
■ 主な登場人物紹介
ジム・トンプソン (James H. W. Thompson)
「シルクの王」と呼ばれた伝説の男。しかし、その手は美しい絹だけでなく、冷たい銃の引き金も知っていた。
第二次大戦中はOSSの諜報員、戦後はタイシルクを世界に知らしめたカリスマ実業家。バンコクに築いた光の王国とは裏腹に、彼の心を支配し続けた「影」とは。そのスパイとしての習性が、自らの運命の引き金を引いてしまうことになる。
リチャード・ノイス (Richard Noice)
伝説の男の失踪を、単なる「事故」では終わらせない。バンコクの若きCIA支局長。
ジム・トンプソンという存在に、尊敬と強い猜疑心を抱き、彼の周辺を嗅ぎまわる。その鋭い視線は、失踪の裏に潜む国際的な陰謀の匂いを嗅ぎつける。
少佐 (The Major)
ジャングルの闇、そのもの。名もなきゲリラ部隊を率いる、冷徹な指揮官。
その出自も経歴も謎に包まれた、歴戦の勇士。彼の「縄張り」と、ジム・トンプソンの「好奇心」が交差する時、物語は悲劇的な終幕へと加速する。
カマール (Kamar)
彼は、ただの監視者だった。あの伝説の男を目撃するまでは――。
革命を夢見てジャングルで戦う、純粋な若き兵士。あるアメリカ人との遭遇が、彼の人生に、あまりにも重く、そして消えることのない秘密を刻みつけることになる。