あらすじ
北海道、北広島市。札幌にほど近いこの街に、エスコンフィールドが完成したのは2023年春のことだった。
しかし、その完成式を待たずに、伸子は長い旅へと出かけてしまう。
――そう、そのときは、旅がこれほど長く続くとは思ってもみなかった。
やがて戻ってみると、街にはすっかり球場が溶け込み、風景の一部となっていた。
家に帰りつくと、机の上に一枚のメモが置かれている。
「?」とだけ書かれた文字。
響香から渡されたメモ用紙の裏には、別の手で「強剪定」と走り書きがある。
たった一枚のメモ用紙が、一日の流れを支配してしまうこともあるのだ。
そう、伸子が「虹の輪」の旅を知ることになったのも、カバンの中に“あるはずのもの”が見つからなかった、その出来事が始まりだった。
蛇口から流れる朝の一滴が、古来の水脈につながっているように。
太平洋も、大西洋も、ときを越えて、物語はひとつながりになることがあるのだ。