あらすじ
会社から「旅する宣伝部員」という名の無期限出向を命じられた桜木裕二、30代後半。彼の相棒は一台の小さなキャンプカー。世間からは「落ちこぼれ」と見られがちな彼だが、その飄々とした旅の様子を配信するSNSには、ごくわずかながら熱狂的なファンが存在した。
今回の任務は、寂れた漁村にある廃業寸前の民宿のPR。しかし、裕二は会社の命令を無視し、自身の気の向くままに旅を続けていた。やがて辿り着いたその民宿を切り盛りするのは、都会の生活に疲れて故郷に戻ってきた女性、立花渚だった。
故郷の味に誇りを持ちながらも、現実に打ちのめされ、疲弊しきった渚。裕二は、そんな彼女が作る郷土料理に心を奪われ、民宿のPR配信を申し出る。だが、彼の仕事ぶりは相変わらず。漁師たちから聞いた「幻の漁法」に夢中になり、会社の会議をすっぽかす始末。その破天荒な行動は、漁村の人々や渚の父親からも落胆を買い、会社の課長はついに彼をクビにしようと決意する。
しかし、その瞬間、事態は一変する。
裕二が純粋な感性で切り取った「幻の漁法」と「故郷の味」の映像が、彼のコアなファンによって拡散され、SNSで爆発的にバズったのだ。その結果、民宿には観光客が殺到し、漁村全体に活気が戻る。裕二の「無駄」に見えた行動が、失われた故郷の価値を呼び覚ましたのだ。
成功の裏で、大手観光会社による商業化の波が押し寄せるが、裕二は利益よりもこの土地の温かさを守ることを選ぶ。
イベントが成功に終わり、裕二は次の旅へ。不器用な二人の恋は実らなかったが、互いに深い友情と尊敬を胸に、それぞれの道を歩み始める。裕二は、この旅で得た確信を胸に、新たな出会いへとアクセルを踏み込む。彼の旅はこれからも続いていく。