あらすじ
二年生の春、七瀬うたは保健室のベッドで、ガーゼの包み紙に短歌を書いていた。昼の教室では平熱の笑顔、放課後は短歌SNS「短界(たんかい)」で“空白”という匿名歌人の暗号めいた歌を追いかける。
その歌は—
さようなら/夜の底から/うつむいて/涙でにじむ/ラストベル
と、行頭の一文字をつなぐと「さよなら」になる頭字詠。さらに歌の季語や枕詞が校内の地図と一致し、期末テスト最終日=「ラストベル」に“誰か”が消える暗示を告げていた。
うたは国語教師・灯(あかり)に相談するが、灯もまた“歌”に縋って生きている人だった。うたは友人・日向透と手分けして歌の暗号を解く。最後の頭字が示したのは—「ナナセウタ」。
自分自身が“空白”なのか。それとも、もっと残酷な、言葉の罠なのか。
ラストベルの鳴る日、うたは五首の短歌で自分を呼び戻す。