あらすじ
時間は、燃える。
それは寿命であり、世界を動かす唯一の燃料――時間エネルギー。
Hazama仮説の発見によって、人類は時間の流れを数値化し、制御し、奪い合う時代に突入した。
真鍮とガラスの都市クロノポリスは、巨大時間炉〈タイムボイラー〉によって“今”を配給されている。
その燃料は、ブラックホール近傍でしか生成されない極限物質――時結晶(エキゾチックマニューバ)。
だが供給は不安定で、地上には時間が完全に止まる停止域が拡大を続けていた。
若き郵便屋リイナは、ある日、局長から一通の時間封書を託される。
宛先は都市の理論機構、差出人は不明。
しかしその封蝋には、物理学者なら誰もが夢見る「時空位相差を固定化する式」の断片が刻まれていた。
封書を巡り、密輸組織、科学者、そして時間そのものを操ろうとする影が動き出す。
都市は燃料不足で停止の臨界点に迫り、宇宙では時結晶を巡る命懸けの採掘戦が始まる。
リイナはただ“届ける”ために走る。
たとえ世界の流れが遅くなろうと、速くなろうと――配達のベクトルは変わらない。
だが封が切られるとき、時間は再び設計可能な物理量へと変わり、彼女は世界の寿命を書き換える権利を握ってしまう。