あらすじ
秋雨がしとしとと降り続く、山間の温泉旅館「花影荘」。
県警捜査一課の刑事・朝倉怜司は、旧知の友人からの誘いで訪れたこの宿で、思いがけず奇妙な事件に遭遇する。
その夜、離れの客室で一人の客が急死した。
密室状態、外部侵入の痕跡なし、しかも死因は即死性の毒物——だが被害者の周囲からは毒物が一切検出されなかった。
宿泊者たちの証言はどれも曖昧で、細部が微妙に食い違っている。
「廊下を歩く足音を聞いた」者もいれば、「雨音しか聞こえなかった」という者もいる。
事件の調査に協力することになった朝倉は、旅館の仲居である美奈と行動を共にする。
だが美奈は、単なる聞き役ではなかった。
彼女は朝倉に食らいつくように自分の推理をぶつけ、時に彼の推測を覆す。二人は互いの論理を突き崩しながら、真相へと迫っていく。
鍵となるのは、ほんの一瞬の沈黙、わずかな視線の動き、そして雨音に紛れた何かの音——。
やがて、旅館に集った客たちの間に隠された過去と確執が明らかになり、事件は第二、第三の展開を迎える。
果たして、密室殺人のトリックは何か。
そして朝倉と美奈、どちらの推理が真実に辿り着くのか——。
読者に与えられるのは、探偵と同じ情報のみ。
あなたは物語の最後までに、この事件の全貌を見抜けるだろうか。