あらすじ
これは、一人の女のために、世界(システム)を欺いた男の、愛と反逆の記録。
未曾有の大災害「大崩壊」から20年。
日本は、全国民がウェアラブルデバイス「契約の腕輪(ケイレス)」で管理される、完璧な監視社会へと生まれ変わっていた。
罪を犯した者は「義務者」として、その罪に紐づく“罰”を社会の中で強制される。
人々は「絆」の名の下に互いを監視し、規律だけが支配するこの国を、人は『戒律の列島』と呼んだ。
厚生労働省・社会生活支援局の監察官、久住 慧(くずみ けい)。
史上最高得点で試験をパスした伝説を持つ彼は、今や「やる気ゼロの落ちこぼれ」と揶揄される、究極の省エネ主義者。
だが、その気だるげな態度の裏に、システムの矛盾を的確に見抜く天才的な頭脳と、修羅場を生き抜いた圧倒的な戦闘能力を隠していることを、まだ誰も知らない。
そんな彼に、新たな命令が下る。
――重要監視対象、宵坂 栞(よいさか しおり)。
かつて、その美貌と才気で多くの男を破滅させた罪で、「他者との一切の接触」を禁じられた美しき義務者。
気だるい「仕事」として始まった監視活動。
心を失ったはずの日常の中で、慧は二つの運命と静かに向き合う。
檻の中でなお気高く咲く花、栞。
そして、過去の罪の象徴――記憶を失い、図書館で働く元相棒、早乙女 環。
一つの出会いが、止まっていたはずの男の時間を、静かに動かし始める。
やがて、栞を巡る小さな事件は、この国を支配する巨大な陰謀へと繋がり、慧は選択を迫られる。
怠惰な仮面を脱ぎ捨て、世界を敵に回すか。
それとも、全てを見て見ぬふりをして、偽りの平穏を貪るか。
「――悪いな。俺は、世界の正義より、目の前の女の涙の方が、どうにも許せない性分でね」
幾重にも張り巡らされた、息を呑むほどの「どんでん返し」。
あなたもきっと、この主人公に裏切られる。