あらすじ
四国、野口町で自動車整備工場を営む景司は、昭和の職人技を誇りに生きてきた。エンジン音を聞き分け、手の感覚で故障を見抜く、そんな「耳と手の整備」は、時代とともに姿を消しつつあった。平成以降、車は電子制御に覆われ、診断機とパソコンが整備の主役となる。景司は若者たちに工場を託し、自らは板金や保険業務に回るが、心には寂しさが残った。
ある日、古い軽トラックの修理を通じて、景司は自分の技術がまだ誰かの役に立つことを知る。町の人々との交流、若者たちとの対話を重ねる中で、景司は「手を離しても残るもの」があることに気づいていく。整備士としての誇りは、工具だけでなく、人の心に刻まれていた。風の底でも、人は咲ける、景司の静かな再生の物語。