あらすじ

ふいに聴こえた歌声は、奈津子にとおい恋の記憶をよみがえらせた。初恋でもなく、最後の恋でもない。だけど忘れられない高校時代の恋。奈津子は同い年の女の子に恋をしていた。同じ教室で過ごしたことはなかったけれど、登下校の時間を、昼休みを、放課後を、ふたりきりで過ごした。まるでその恋が世界のすべてだとでもいうような、ひどく幼い恋だった。はじまりなんて曖昧で、終わらせることもなく置いてきたとおい恋の記憶。振り返るには遅すぎて、だけど、願うくらいは許されるだろうか。 ひとりきりの部屋はほんの少し寒くて、隙間風ばかりの小さな部室に似ていた。だけど隣にあなたはいなくて、ギターの音も歌声もない。卒業してからあなたを思い出さなかったと言えば嘘になる。いつでも想っていたわけじゃない。でも、あなたに恋をしていた日々は確かにわたしの一部だった。もっと好きだと言えばよかった。もっとその手に触れたらよかった。もっと、もっと。と、いまさらになって欲張りになってしまうのは何故だろう。いっそぜんぶ夢だったなら。なんて思うのは、大人になってしまったからだろうか。 ――いつかあなたに歌ってほしい歌がある。

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カクヨム
カクヨム2025/08/28
  • 現在の作品ラブソングを歌って