あらすじ
三浦紗奈――ただの高校生。
地方の商店街に住む、ごく普通の少女だった。
特別な才能があると思ったことはない。ただ走るのが好きで、ただラケットを振るのが楽しかった。
けれど、ヘアタイを結んだその日から、彼女のテニスは少しずつ変わりはじめる。
最初は誰も知らなかった。無名の一選手にすぎなかった紗奈は、仲間や家族、商店街の人々の支えを受けながら、ひとつ、またひとつと勝利を積み重ねていく。
時に挫けそうになり、時に孤独に震えながらも、彼女は「支えてくれる人に胸を張るために勝ちたい」と願い、ラケットを握り続けた。
彼女の代名詞となったのは、白線を正確に撃ち抜く一撃――必殺技「ラインスナイプ」。
審判泣かせのショットと称されながらも、それは彼女が必死に掴んだ努力の証だった。
県大会を駆け抜け、全国の頂点へ。
やがて訪れたのはロンドン、世界の舞台。
慣れない言葉、文化の違い、そして孤独。
けれど、片言の英語と無邪気な笑顔で少しずつ人の心を開き、異国の地にも応援の輪が広がっていった。
立ちはだかったのは、ロンドンの至宝と呼ばれる天才少女――エマ・ローレンス。
かつて嵐で中断された因縁の試合。
「続きを見たい」と願った観客の前で、二人は再び相まみえる。
圧倒的な力で押すエマ。膝の痛みに耐えながら食らいつく紗奈。
何度も何度も心が折れかけるたび、彼女の背中を押したのは、日本で声を枯らして応援する家族や友人、商店街の人々だった。
「胸を張れ」「走れ」「負けるな」――その声は海を越えて彼女の耳に届く。
やがて試合は誰もが息を呑む死闘となる。
30を超えるラリーの末、光り輝く白線を走った一撃――「ラインスナイプ」。
審判の「イン!」の声に、会場は総立ちとなり、世界は小さな日本人少女の名前を叫んだ。
勝敗の先にあったのは、敵ではなく“ライバル”として結ばれた友情。
「また必ず戦おう」――そう誓い合った二人は、未来への扉を開いたのだ。
無名から始まった少女が、仲間と支え合い、努力と想いで世界に名を刻むまでの軌跡。
これは、夢を信じ、誰かのために立ち続けた、一人の高校生の物語。
そして――世界は今も、彼女の続きを待っている。