あらすじ
埼玉・川越の寂れたシャッター商店街。再生計画を巡る青年会議所(JC)の議論は、若手リーダー・小林拓海の理想論と、桜田ら現実主義者の対立で停滞していた。ある日、議論に絶望した小林は「雲隠れします」というSNS投稿を最後に、忽然と姿を消す。
警察はJC内のトラブルによる家出と断定し、捜査は難航。しかし、警視庁の橘刑事だけは、事件の裏に潜む深い闇を直感し、旧知のデザイナー探偵・伊月優斗に協力を仰ぐ。伊月は、小林のSNSに残された一枚の雲の写真から、これが彼自身によって緻密に計画された、街を揺り動かすための意図的な「デザイン」であると看破する。
伊月の指示の下、パートナーの弓月真理は、小林のPCやクラウドストレージの解析を開始。一方、JCの活動を取材していた地元の高校放送部「川越ラジオ」の野々村ひかりと相田航平は、伊月の助言を受け、視点を変えて商店街の子供たちや老人たちへの取材を始める。
弓月の分析により、小林が商店街の暗い過去――数十年前に起きた「集団制裁」事件――にたどり着いていたことが判明。時を同じくして、高校生たちも、子供たちの遊びの中に隠されていた「星座の地図」が、その事件現場を指し示していることを発見する。彼らのレポートはSNSで『#川越の雲を探せ』というハッシュタグと共に拡散され、生徒会長の桐谷彩音や、早瀬海斗率いる学校に馴染めない生徒たちをも巻き込み、市民参加型の大規模な捜査という巨大な「うねり」を生み出していく。
この「うねり」は、硬直した警察組織をも動かす。橘刑事、金城署長、三神部長は、組織の論理に抗いながらも、高校生たちが集めた情報を元に捜査を進めることを決断。一方、伊月は、小林がSNSの雲の写真のメタデータに隠した暗号を解読し、海外のクラウドサーバーにアップロードされた動画ファイルを発見する。そこには、自らの失踪が街を再生させるための「ショック療法」であると語る、小林自身の告白が記録されていた。
動画に示唆された潜伏先、新河岸川沿いの廃工場で、伊月と小林は対峙する。小林は、自らの計画が多くの人々の心を動かしたことを確認し、満足げに橘刑事の前に出頭する。
一年後。小林の起こした「うねり」は、現実のものとなった。