あらすじ
中庭の枝垂れ桜が夜露に濡れる校舎裏。その満開の下に立つ高橋 咲(さき)は、片思いの相手・理人(りひと)の想いを、誰にも届かない「夜明け前の桜」に乗せて、毎朝小さな詩をつぶやいている。朝の静けさだけが、彼女の気持ちの受け皿なのだ。
ある朝、理人が声をかけてくる――「君、桜に何か書いてる?」。咲はその質問にパニックになるが、想いを伝えたくて勇気を振り絞る。詩を小さな紙片にしたため、夜明け前に桜の根にそっと置く。翌朝、それを持って理人が現れて……。
夜明けの淡い光と桜の匂いの中で、すれ違いが解きほぐされ、二人の距離はゆっくりと近づいていく。