あらすじ
2015年夏
日本と太平洋を舞台に、かつて海に沈んだ艦たちの魂が呼び起こされ、歴史を越えた戦いが始まる
現代に現れたのは、怨嗟の念に囚われた艦隊
第二次大戦後の核実験で非業の最期を遂げた艦たちが黒い嵐を纏いながら復活し、再び人類に牙を剥く
その中には、日本の象徴的な戦艦すら含まれていた
対峙するのは、現代日本の海上自衛隊と米海軍第3艦隊をはじめとする連合勢力
だが従来の武力だけでは、怨嗟の艦隊を退けることはできない
砲火は通じても彼女らの魂は鎮まらず、撃沈してもな浮かび上がってくるのだ
その只中に姿を現したのが、往年の戦艦陸奥の艦魂(かんこん)として現代に歩み出た存在だった
彼女は自らを艦娘(かんこ)と名乗り、艦体と人の姿を繋ぐ特殊な存在として現代日本に降り立つ
彼女の語るところによれば、艦魂とは戦いと記憶に縛られた“意志”であり、人が祈りや願いを込めて接することでのみ鎮まるのだという
やがて世界に広がっていく祈り込めた一撃
それは兵士や整備員、宗教関係者だけに留まらず市井の人々も兵器や作戦に“祈り”を託すことで、怨嗟への対抗を導く新たな力となる
米空母の甲板では爆弾やミサイルに鎮魂の寄せ書きがなされ、海自護衛艦では対艦ミサイルや砲弾に御神酒が奉げられ、艦内神社に祈りを奉げた艦長自らが発射ボタンを押す
単なる信仰や迷信ではなく、人類が艦魂たちを“敵”ではなく“かつての戦友”と見て立ち向かう証として
日本の政治指導者たちはこの異常事態に対応すべく奔走する
総理大臣、防衛大臣らは現実の安全保障体制を超えた判断を迫られ、国家の根幹である象徴までもが関わる事態に発展する
護衛艦いずもを中核とした特別任務部隊〈タスクフォース・サルタヒコ〉が結成され、日米協力のもと未曽有の危機に挑むこととなる
しかし艦魂とのリンクは戦う者に大きな負担を強いる
陸奥自身も戦闘で負った傷がそのまま身体に反映され、時に血を流し倒れながらも前に立ち続ける
彼女を支えるのは最前線で共に行動する若き自衛官たち
人と艦娘、現代と過去、兵器と魂、その境界を超えた絆が試されていく
そして物語の奥には、敗戦から現代に至るまでの昭和天皇の人間宣言や、海上自衛隊の歩み、戦後日本が培った平和主義と国際協調の姿勢が深く関わっている
なぜ日本の艦娘は艦体と同時に存在できなくなったのか
なぜ今、この時代に彼女たちは蘇ったのか
すべては歴史と人々の記憶に結びついている
皇国の護衛艦隊は、
太平洋の洋上で繰り広げられるスリリングな戦闘描写、
歴史と現在をつなぐ艦魂(かんこん)システムの謎、
世界各国や宗教界をも巻き込む「祈り込めた一撃」の連鎖、
そして人と艦娘の心の交流と決断、
これらを重層的に描き出す群像劇である