あらすじ
田中透は高校二年の秋、図書館でゲーデルの不完全性定理を読んでいる際に、不思議な少女「パラドックス」と出会う。彼女は「この文は偽である」という矛盾そのものが具現化した存在であり、自らの実在を証明できずに苦しんでいた。透は彼女の存在証明に挑む決意をする。やがて二人は愛し合うようになり、透は感情と論理を結びつけて考えるようになる。
しかし司書から「パラドックスが解決されれば消えてしまう」と告げられ、透は彼女を救うべきか葛藤する。パラドックス自身は「消えることも恐れない」と語り、「愛こそが矛盾を抱える私を支える」と告げる。透は「愛があれば存在を成り立たせられる」と考え、多値論理や階層理論を取り入れつつ、彼女が矛盾せず存在できる理論を構築する。
理論が完成すると、パラドックスは光に包まれ、人間の少女「佐々木理子」として新たに生まれ変わる。透は変わった彼女をも受け入れ、二人は恋人として日常を過ごす。やがて共に大学に進学し、「愛が論理を補完し、矛盾を乗り越える力となる」という新しい学問「情動論理学」を開拓する。
十年後、二人は結婚し娘を育てながら学問を発展させていた。透は思う。パラドックスの解答は、理子の微笑みに他ならない。証明できぬ美しさ、矛盾を抱えたままの愛こそが真理であり、その微笑みこそ二人の愛の完全な証明だった。